日露戦勝記念の「砲弾狛犬」(横浜・川崎)

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神奈川県と千葉県に、砲弾を抱えた狛犬がいる。

なんでも、神奈川県横浜市内の2社、川崎市内の2社、千葉県館山市内の1社の合計5社にて、境内に「砲弾を抱えた狛犬」こと通称「砲弾狛犬」が現存しているという。

いずれも明治34年(1904)から明治35年にかけて日本とロシアの間で勃発した日露戦争での戦勝記念で建立奉納されたもの。
神社において伝統的であった「狛犬」が、近代の熱狂の中で、砲弾を抱え始めたという、ひとつの時代の象徴的な姿、でもある。

そんな「砲弾狛犬」の姿を、今回は、横浜と川崎に見に行ってみようと思う。

※千葉館山にも行きました。

以前、横浜と川崎の砲弾狛犬を特集した。その続き。 日露戦勝記念の「砲弾狛犬」(横浜・川崎) 先日、館山に赴いた際に...

本牧原の吾妻神社「砲弾狛犬」(横浜市)

神奈川県横浜市中区本牧原の鎮座。旧社格では村社。
御祭神は日本武尊。

南北朝期の文和3年(1354年)、新田義貞の家臣であった篠塚伊賀守平重広が勧請したという。

社頭の左右には獅子山があり、砲弾を抑えつけた狛犬がいる。
狛犬は、明治39年(1906)5月の建立。日露戦争戦勝記念で建立された。

阿行(開口)の狛犬は「戦捷」の球型砲弾、吽行(閉口)の狛犬は「祈念」の椎実型砲弾を抑えつけている。

戦捷 ( 球型砲弾 )

祈念 ( 椎実型砲弾 )

りっぱな獅子岩。子獅子を従える。

王師渡海 屡戰屡克 豈獨人力 惟神之徳

嗚呼神徳 何以永憶 爰設狻猊  撰文以刻

場所

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お三の宮日枝神社「砲弾狛犬」(横浜市)

神奈川県横浜市南区山王町の鎮座。旧社格は村社。


日露戦争戦勝記念として、明治40年10月建立。
本牧原の吾妻神社に遅れること1年半後に奉納された。おそらくは同じ石工に手によると思われる。
昭和11年9月再建。

マスクをしているので、阿吽がわからないが。。。
阿行(開口)の狛犬は「戦捷」の球型砲弾、吽行(閉口)の狛犬は「祈念」の椎実型砲弾を抑えつけている姿は、本牧原の吾妻神社と同じ。

戦捷 ( 球型砲弾 )

祈念 ( 椎実型砲弾 )

日露戦戦捷為記念
 明治40年10月之建

皇徳溢内 威稜耀外 海表萬里 遠掲大旆

維勇維武 献靖報國 凱歌髙揚 ■■神徳

公式サイト

場所

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川崎大島の八幡神社「砲弾狛犬」(川崎市)

川崎市川崎区大島の鎮座。
川崎市大島地区の鎮守様。

砲弾狛犬は明治39年10月建立。
阿吽の狛犬のうち、口を閉じた吽行の狛犬の脚下に「椎実型砲弾」がある。
阿行の狛犬は球体だが、何やら違和感がある。もしや、この部分だけ後世の作り変え?

台座には、陸軍を表す「小銃」と海軍を表す「錨」が刻まれている。

凱旋記念の砲弾狛犬。

凱旋

紀念

明治39年10月建之

阿行の狛犬は顔が破損。そして、球体が不自然。

台座には、旭日旗。

旭日旗の台座。

場所

大戸神社の「砲弾狛犬」(川崎市)

川崎市中原区下小田中の鎮座。
戦国時代の永正年間(1504年-1521年)に、世田谷吉良氏家臣の内藤豊前の舎弟にあたる内藤内匠之助が信濃国戸隠大明神を勧請したことにはじまるという。
御祭神は、手力雄命、ほか。

砲弾狛犬は、明治40年(1907年)10月吉日建立。日露戦争戦勝記念。
阿吽の狛犬が対で砲弾(椎実型砲弾)を抱えている。砲弾には金属の輪が施されており、意匠に富んでいる。

閉口している吽行の砲弾狛犬は、砲弾を体側に傾けている。

日露戦捷紀念

一方、開口している阿行の砲弾狛犬は、砲弾を外側に傾けている。

日露戦捷紀念

境内には、「平和の礎」碑があった。昭和43年建立の慰霊碑。

平和の礎
 川崎市長 金刺 不二太郎 書

 今は昔昭和6年満州事変に始まる一連の大東亜戦争が20年8月痛ましくも玉音放送を以て終結する迄日本は実に有史未曾有の非常時でありました。此の間祖国の平和の為に氏神大戸神社社頭より聖戦に従軍したる者百有余名万里の波濤を越えて各地に勇戦したがあゝ悲しい哉内30余名の人々は酷寒の大陸に灼熱の孤島に草むす屍水つく屍とあたら若き生命を散華して再び故国の土を踏むことは無かったのであります。
 やがて星移り年は変わって戦後の混乱も漸く治まり独立日本に平和甦る此の時恰も明治百年を記念し従軍生存有志一同を以て戦歿者慰霊碑平和の礎を縁の大戸神社境内に建て、国に殉じた今は亡き友人たちの霊を慰め永しへに日本よ平和であれと切に祈念するものであります。  昭和43年9月 建立
   従軍有志

場所


付記
砲弾狛犬とは関係ありません。。。
川崎をうろうろして、立ち寄りついでに。

稲毛神社(稲毛公園)の「平和の塔」

稲毛神社の瑞垣は皇紀2600年記念。昭和15年’(1940年)。

稲毛神社の隣にある稲毛公園にひっそりとある「平和の塔」。
もともとは、「忠魂碑」であったという。

平和の塔としては昭和43年竣工。
しかし、いわれてみれば「台座」の造りは、昭和43年のデザインではないだろう。戦前の忠魂碑の台座が流用されたことが推測される。

平和の塔の裏面。何かを無理矢理に剥ぎ取ったような跡がある。

場所

※撮影:2022年2月


砲弾狛犬5社

神奈川県横浜市南区山王町5-32
 お三の宮日枝神社

神奈川県横浜市中区本牧原29-18
 吾妻神社

神奈川県川崎市中原区下小田中1-2-8
 大戸神社

神奈川県川崎市川崎区大島3ー4ー8
 八幡神社

千葉県館山市長須賀406
 熊野神社

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